いつもお世話になっております。
オーナー社長の皆様に、ある実話をお伝えします。
資産3億円超の元オーナー社長。
認知症発症後、裁判所から選任された後見人に
「月15万円の施設で十分です。贅沢は認められません」と宣言され、
ご本人が望んでいた高級高齢者施設には入れなかった。
ご家族は「長年会社を興し、血のにじむような努力をして築き上げた父のお金なのに、なぜ自由に使えないのか」と、悔しさをにじませていました。
これ、実は個人のプライベートな問題だけでは済まない、会社経営上の大問題なのです。
経営者個人の「資産凍結」が会社に牙をむく理由
成年後見人の法的な義務は「本人の財産を減らさないこと(現状維持)」です。
そのため、社長の認知症後に後見人がつくと、以下のような事業継続上のトラブルが頻発します。
| 会社側の必要性 | 後見人の判断 |
|---|---|
| 会社への貸付金(役員借入金)の返済を猶予したい | ❌「本人の財産保全のため、会社は即座に返済してください」 |
| 社長個人名義の事業用地を会社へ売却・貸出したい | ❌「リスクのある取引は原則として認められません」 |
| 会社の資金調達のために社長個人が保証人になりたい | ❌「本人が損失を被る可能性があるため、保証人にはなれません」 |
つまり、どれだけ個人資産があっても「会社を支えるため」には1円も使えなくなり、それどころか後見人から「会社への貸付金の強硬な回収要求」を突きつけられ、会社のキャッシュフローが破綻するケースもあるのです。
会社と個人資産を守る「家族信託」によるお金のルール設計
家族信託を使えば、社長が元気なうちに「お金の使い方のルール」を法的に決めておくことができます。
- 「介護費用は社長の希望通り、月50万円まで信託財産から支出する」
- 「会社の資金繰りが厳しい場合は、あらかじめ決めた枠内で会社へ融資してよい」
- 「個人所有の事業用不動産は、会社の事業計画に合わせて受託者(後継者)の判断で売却・建て替えを行ってよい」
こうしたルールを信託契約に組み込んでおけば、認知症になった後も、後継者が迷いなくルールに従って資産を管理・活用できます。裁判所や後見監督人に経営を妨害される心配はありません。
社長が今すぐ取るべき対策
会社とご自身の尊厳を守るために、以下の点について一度整理してみることをお勧めします。
- 社長から会社への貸付金(役員借入金)の有無と金額の確認
- 会社で使っている不動産(事業用地・事務所など)の所有名義の確認
- もしも自分が認知症になったとき、会社に与える資金面の影響力
「自分のお金なのに、会社や自分のために使えない」という最悪のシナリオを避けるために。今、お元気なうちにこそ、信託を活用した仕組みづくりを始めておきましょう。
認知症・相続みらい相談室