【みらい経営者通信2026年6月第2号法人編】「任意後見で安心」という社長が陥る罠——会社の意思決定と自社株をフリーズさせないための必須知識

いつもお世話になっております。

オーナー社長の皆様に、一つ重大な質問です。

「万が一、自分が認知症になったときのために『任意後見』の契約をしてあるから大丈夫」
そう思っていませんか?

実は、個人としては有効な任意後見も、「会社の経営者」としては致命的な落とし穴になり得ます。最悪の場合、社長の認知症によって会社の事業が完全にフリーズするリスクがあるのです。


なぜ「任意後見」だけでは会社を守れないのか?

任意後見は、認知症になった本人の「生活」や「療養」を守るための制度です。そのため、本人の財産を守ることが最優先され、以下のような「経営上の意思決定」は原則として認められません

  • 自社株の議決権行使:株主総会での議決権行使が認められず、役員改選や重要決定ができなくなる。
  • 事業用不動産の売却や建て替え:会社の資産であっても社長個人が所有している場合、裁判所や監督人の厳しい制限により処分できなくなる。
  • 新規の投資や資金調達:リスクを伴う取引は「財産維持」に反するため、一切認められない。

さらに、任意後見がスタートすると、家庭裁判所から「後見監督人(弁護士や司法書士など)」が選任され、経営とは無関係の第三者に会社の重要財産や社長個人の資産を監視されることになります。監督人への報酬(毎月数万円〜)も生涯発生し続けます。


会社と家族を守る「家族信託(事業承継信託)」の力

このリスクを回避するために、多くのオーナー経営者が導入しているのが「家族信託」です。

家族信託を活用すれば、社長が元気なうちに、自社株の「議決権(コントロール権)」を後継者に託し、株の「経済的価値(配当などを受け取る権利)」は社長の手元に残しておくことができます。

これにより、社長が認知症になっても、後継者が滞りなく会社の舵取りを続けることが可能になります。

【比較】経営者から見た「任意後見」と「家族信託」

対策したい項目任意後見(個人の保護)家族信託(事業の継続)
自社株の議決権行使❌ 困難(家庭裁判所の許可や制限あり)✅ 後継者がそのままスムーズに行使可能
事業用不動産の処分・有効活用❌ 原則不可(リスク行為とみなされる)✅ 信託契約に基づき後継者が柔軟に実行可能
会社経営のスピード感❌ 裁判所の監督下に入り、著しく低下✅ 裁判所の関与なく、迅速な意思決定を維持
相続対策(生前贈与等)の継続❌ 不可(本人の利益保護に反するため)✅ あらかじめ決めたスキームで継続可能
本人の生活・入院手続き等✅ 任意後見人が法律に基づいてサポート❌ 対象外(財産管理のみ)

オーナー経営者が取るべき「ハイブリッド対策」

会社経営と個人の生活、どちらも守るためには「任意後見」と「家族信託」の併用(ハイブリッド設計)がベストです。

  • 家族信託:自社株や事業用不動産、会社への貸付金などを信託し、事業の継続と承継を確保する。
  • 任意後見:プライベートな預貯金の管理や、将来の施設入所手続きなど、社長個人の生活サポートを確保する。

この二重の備えをしておくことで、万が一の時にも会社を揺るがすことなく、次の世代へスムーズにバトンを渡すことができます。


「わが社と私自身の備えは大丈夫か?」と思われた社長へ

  • 現在の事業承継計画に認知症対策は組み込まれているか?
  • 自社株がフリーズした場合、どの程度の影響が出るか?
  • 任意後見と家族信託、わが社の場合はどう組み合わせるべきか?

経営環境やご家族の状況によって、取るべき対策は一社一社異なります。

まずは、社長ご自身の「認知症による会社フリーズリスク」をセルフチェックしてみませんか?

会社と従業員、そしてご家族の未来を「フリーズ」させないために。今、お元気なうちにこそ、万全の準備を整えておきましょう。


認知症・相続みらい相談室

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