「先生、うちは大丈夫です。公正証書遺言も作りましたし、相続税の対策もバッチリですから」
先日お会いした60代の佐藤さん(仮名)は、自信に満ちた表情でそう話してくれました。
たしかに、遺言書を作り、相続税対策まで済ませている方は、それだけで上位数パーセントに入る「準備ができている人」です。
でも——私がたった一つの質問をしたとき、佐藤さんの表情が凍りつきました。
「佐藤さん、もし明日、認知症と診断されたら……その遺言書は、佐藤さんを守ってくれますか?」
答えは、「守ってくれません」。
ここに、多くの方が気づいていない決定的な事実があります。
相続対策は「亡くなった後」の備え。
認知症対策は「生きている間」の備え。
この二つは、まったく別物なのです。
遺言書がどれほど完璧でも、認知症になって判断能力が低下すると、「生きている間」は一切機能しません。
実際に、佐藤さんのご近所に住む70代の田中さん(仮名)の身に起きたことをお話しします。
田中さんも遺言書を準備していました。
ところが認知症と診断された後——
自宅を売却して介護付きホームに入りたかったのに、不動産は凍結。
売れません。
老後資金として貯めていた3,000万円の定期預金を崩したくても、銀行で門前払い。
お子さんの住宅購入を援助してあげたくても、生前贈与は不可能。
田中さんのご家族は言いました。
「遺言書があるから大丈夫だと思っていたのに……。
父が生きている間、何もできないなんて、誰も教えてくれなかった」
3,000万円の貯金があるのに、1円も使えない。
自分の家なのに、売ることもできない。
これが「資産凍結」という、遺言書では防げない現実です。
「でも、自分はまだ元気だから」——そう思いましたか?
厚生労働省の推計では、65歳以上の約4人に1人が認知症またはその予備軍です。
しかも、認知症は本人が「おかしい」と気づかないまま進行することも少なくありません。
つまり、「まだ大丈夫」と思えている今この瞬間こそが、対策できる最後のチャンスかもしれないのです。
では、どうすればいいのか?
大切なのは、次の3つの考え方です。
① 元気なうちにしか、手は打てない
認知症の診断が出てからでは、法的な手続きの多くができなくなります。
「早すぎる」ということは絶対にありません。
② 家族の愛情だけでは、資産は守れない
どれだけ家族が協力しても、法律の壁は越えられません。
「想い」を「仕組み」に変えておく必要があります。
③ 相続対策+認知症対策で、はじめて「完璧」になる
遺言書は「亡くなった後」を守る盾。認知症対策は「生きている間」を守る盾。
両方そろって、はじめてご家族の未来は万全になります。
佐藤さんは、この話を聞いてこう言いました。
「遺言書を作って、すっかり安心しきっていました。 生きている間のことなんて、考えたこともなかった……。 今日聞けて、本当によかった」
佐藤さんはその日のうちに、認知症対策の具体的な検討を始められました。
あなたの遺言書は、「亡くなった後」だけでなく、「生きている間」も、あなたとご家族を守れる状態になっていますか?
もし少しでも不安を感じたなら、それは「気づけた」ということです。 気づいた今なら、まだ間に合います。
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